Computer & RF Technology

NanoVNA(仮称)を製作予定です

先日クロックジェネレータチップSi5351Aを試していましたが、ふとこれを使ってVNA (ベクトルネットワークアナライザ)を作れるんじゃね、と思いついてしまいました。以前試したVNWAのクローンではDDSチップを二つ使っていましたが、Si5351Aなら個別に周波数を設定できる出力が3つもあります。

以前よりスタンドアロンなVNAを作りたいと考えていました。最近いろいろやっていたので、MCUやLCDなどの必要な要素がほぼ揃ってきています。えいやっと回路を引いたら、うまくまとまりそうなので勢いでレイアウト、基板を発注したらあっという間にできてきてしまいました。下の写真がその基板です(部品を仮置きしています)。

3年程前になりますがAD9859 DDSを使ったVNAを試作していました。VNWAとして販売されている製品の原理を、QEXに掲載されていた情報を元に追試しました。その際にいろいろと課題がわかりましたので、その後改良版を作るつもりいたのですが、そのまま放置になっていました。

信号源としてSi5351Aを使うと部品がかなり減らせます。違いとしては、DDSだと出力は正弦波ですが、Si5351Aはクロックジェネレータなので方形波です。VWNAではDDSのエイリアスを使うことでGHz前後の上の帯域をカバーしていました。ここがVNWAのすごいところだったのですが、方形波でも倍音成分を使うことで同様なことができるのではないかと期待しています。ここは実験次第です。

ところで、最近の工作で、オーディオコーデックとしてTLV320AIC3204をよく使っていますが、実はこのチップを選定した理由の一つが、VNWAのスタンドアロン版を作ることを想定していたからなのでした。VNWAでは、観測すべき信号が三つ、これをステレオサウンド入力の2チャネルで観測するためにアナログスイッチで信号を切り替えていました。一方、TLV320AIC3204は入力が3つあり、これをチップの設定で切り替えることが可能です。しかも差動入力で使えるので、ギルバートセルミキサSA612の出力をそのまま入れることができます。さらにPGAが入っているのでアンプも不要で、とてもシンプルな構成とすることができます。

スタンドアロン化のため、LCDディスプレイと、レバースイッチとプッシュボタンを用意しました。レバースイッチにもボタンが付いていますが、それとは別にボタンを追加したのは、スキャン開始の操作をしやすくするためです。LCDはLPC4370 SDRで実績のあるILI9431で、基板に直接実装するタイプの部品が入手可能なのでこれを使います。おまけとしてこのLCDには抵抗膜タイプのタッチパネルが装備されています。これを基板の裏に直接載せて、フレキケーブルをハンダ付けして実装する予定です。全体で10mm以下と、自作品にしては薄く仕上げられる予定です。

LCDは320x240とピクセル数は多くはありませんがピクセルが細かいおかげで案外と綺麗な表示ができることがわかっています。ここに美しいスミスチャートを描きたいと思っています。色数が多いので、階調表現による滑らかな曲線を描くことができるはずです。UIと合わせてソフトウェアの工夫のしどころです。

操作はレバースイッチとボタンで行う前提にしておいて、タッチパネルはもしうまく使えそうなら試そうと優先度は下げて考えています。

スタンドアロンでの動作を最終的な目標にしますが、もちろんPCからUSBで接続して制御して使うことも想定しています。おそらく最初はPC前提に開発することになると思います。

電源はUSBですが、LiPoも試してみようと用意しています。アナログ部分のSA612の電源が5Vなのですが、LiPoの場合取れる電圧が3.6V程度でミキサの仕様外になってしまうので、果たしてうまく動作するかは不明です。

ブロック図を示します。

MCUにはSTM32F072を使うつもりです。信号処理とは言っても、SDRと違ってリアルタイムではないので、Cortex-M0で充分ではないかと考えています。小さなメモリでどこまで作り込めるかです。もし入らなかったらF303に変更します。

原発振には26MHzのTCXOを使います。TCXOは振幅の小さいClipped sine waveを出力するタイプのモジュールが多いですが、これがSi5351Aで使えることは実験で確認済みです。さらに周波数を微調整できるVCTCXOタイプを使ってMCUのDACで調整できるようにします。本当なら外部から10MHzを入れられると良いのですが、残念ながらSi5351Aだと無理です(実はSi5351Cなら可能なのです。代わりにピン数が増えてしまいますが)。

ブロック図には書き忘れましたが、余力があればSDカードに測定値をタッチストーン形式で記録することを検討しています。写真にあるソケットがそれです(基板から出っ張りますが面積的に仕方ありませんでした)。microSDではなくSDにしたのにはもちろん理由があります。これに関して、ちょっと面白いことができると良いなと思っています。

と、妄想はいろいろ膨らんでいますが、まだFriskSDRの作業が終わっていないので、VNAの実験と製作に取りかかるのはもうちょっと先になりそうです。果たしてうまくいくかどうかもわかりませんが、作業に取りかかるまで構想を練っておきたいと思います。

そういえば、CQ社RFワールド誌の次号(No.35)でVNAの製作記事が特集されると予告されていました。Windowsで制御するようですが、こちらも楽しみです。

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