NanoVNAが実用的に使えるくらいには動くようになってきましたので、実践例としてクリスタルフィルタを測定してみました。
測定対象は、3端子の21.4MHzクリスタルフィルタです。おそらく日米商会あたりで買ってきた部品です。NDK 21F15Bと銘があります。
測定のため、まずは周波数を設定します。中心周波数(CENTER)を21.4MHz, SPANを200kHzとします。タッチパネルで操作しています(使っているのはレバースイッチを省略した製作2台目です:ファームウェアは同じです)。
トレースは、通過信号(CH1=THRU)の、LOGMAGとPHASEを表示するように設定します。
そのままクリスタルフィルタを接続するとフィルタっぽい特性が見えます。しかし、インピーダンスが合っていないため、こんなふうにツノが出た特性になってしまいます。
クリスタルフィルタの入出力インピーダンスは、50Ωからはかなりかけ離れていて、かなり高いため、マッチングのためとりあえず入出力それぞれに470Ωの抵抗を入れてみました。(部品をケーブルを接続するために治具を使っています)
そうすると、ちゃんとフラットトップな特性が得られます。
この状態では、マッチングのために入れた抵抗のロスも含まれています。そのため、抵抗を含めてCALしてみます。いったんクリスタルフィルタを外し、抵抗同士を接続してスルーの特性を取ります。次に抵抗同士の接続を外してアイソレーションの特性を取り、その状態でCAL DONEします。そうすると、抵抗によるロスと、配線や治具による漏れがそれぞれキャンセルされた結果が得られます。
そうしてから、クリスタルフィルタを改めて接続すると、こんな結果が得られます。フラットな部分ではロスが0.7dB程度、幅は12kHz程度でした。CAL前では裾の部分に、通過信号と漏れのクロスによる跳ね返りがありましたが、CALでアイソレーションを適用することにより漏れ信号が打ち消されて、スカートの特性が綺麗に得られています。このように系の不完全性による誤差成分を取り除いた観測することができるのがCALの可能なVNAの強みです。
というわけでちゃんとそれらしい特性が取れました。
フィルタの通過帯域幅を数値で計測するのに、マーカーデルタの機能が欲しいところです。それから、自動で3dBの位置を見つけだす機能も欲しいです。ちゃんと使おうとすると、不足している機能に気がつきます。折をみて実装してみたいと思います。
ついでにPCでデータを取ってみました。USB経由でCAL後の特性をデータとして得られ、もちろんグラフにもできます。Jupyter notebookで作業していますが、とても便利だと思います。便利すぎて、スタンドアロンアプリを作る気にならないのです。