Computer & RF Technology

引き続きOCXOとGPSの安定性を試している

前回に引き続きGPSDOをDIYするべく、GPSやOCXOをあれこれ試しています(まだ周波数制御はしていません)。前回は手軽に5Vだけで動作させられる小さいOCXOで実験していました。手元には、さらに良好な安定度があるとされるダブルオーブンな大きいOCXOがあります。果たして安定性に違いが見られるのか試してみました。

2つのOCXOを同時に比較実験をするために、アンテナを共用して2台のGPSを同時に動作させられるよう、アンテナスプリッタを作ってみました。マイクロストリップラインによる簡単なウィルキンソンディバイダです。

アンテナはパッチアンテナを屋根の上に設置しています。底面がマグネットなのでトタン屋根に取り付けられます。とても簡便で良いのですが、これから冬に向けて、雪で埋もれてしまうので、レドームなど設置方法を考えたいところです。

両方をモニターするためu-centerを二つ同時に動かします。別々のCOMポートに割り当てられますので、それぞれ接続して様子を見ます(USBの接続ポートを変える度にCOMの番号が増えていきます。現在12までありますw)。測位結果のドリフトが似た動きをしていますが、まったく同一というわけではありません。

数日間データを取り続けるために、データを収集するホストにはRaspberry Piを使うことにしました。接続はUSBなので、複数台あっても問題ありません。

Linuxの場合は、USB-CDCデバイスは、/dev/ttyACMn (nは数字)として見えます。OSXと同様に、USB-CDCからcatで読み出してファイルに記録していきます。

$ cat /dev/ttyACM0 > 20150930-5v.log

これをグラフにします。もちろんIPython notebookを使います。Raspberry Piでも問題無く動作しますが、ちょっと遅い感じがします。一日=86400秒分を表示してみます。

値がふらつくというよりは、明らかに下降のトレンドがあります。一日で一方的に10mHz動いてしまうのは少し残念な結果です。また、値が飛んでいるのは、途中でオシロを接続したことが原因のようです。OCXOの出力インピーダンスは50Ωなのですが、いい加減に終端しないままにしてあったのですが、当然ながら影響を受けてしまうようです。正しく終端したうえで、別途出力を取り出すためにはバッファを用意しなければなりません。次回の課題ということにします。

つづいて、DOCXOです。上と同時に計測した結果を見てみると、なんとこちらは逆に上昇トレンドで、幅も70mHzもあります。大きなダブルオーブンが、小さなシングルオーブンよりも悪い結果なのは、さらに残念です。長期保管してあったものなので、しばらくエージングが必要なのでしょうか。

二つのOCXOが、まったく逆のトレンドを示しているので、OCXO側の要因が大きいと考えています。前回の結果では、ふらつきはあったものの限定的な範囲だったのでまぁ満足な結果だったのですが、今回は思わしくないので、もう少し継続して試してみる必要がありそうです。

本当なら一つの基準でカウントした結果を比べたいところですが、今回は一つの同じアンテナを共用した同一機種二つのGPSのPPSでそれぞれカウントしています。二つのGPSの出力に有意な差は無いと思っているのですが、確認しているわけではありません。

ちなにみ、DOCXOは5cm角のサイズがあり、起動時には1A程度の電流を必要とします。十分に暖まった後は200mA程度の消費のようです。消費電力も大きいため、結構熱くなります。放射温度計を向けてみたところ、55度程度ありました。ケースに入れる場合には気を使う必要がありそうです。

さて、GPS側にも時間や周波数に関する設定がいくつかあります。特に興味を引かれたのが、位置測位をしないで固定位置を与えた上で時間を測定するFixedモードや、先に位置測位を十分な精度が出るまで行った後、それを固定位置として以後は時間測位を行うSurveyInモードです。これを試してみました。このモードを利用するには設定変更が必要で、u-centerのConfigからTMODE2を開き、TIMEモード変更の他、位置精度のしきい値等を与えたあと、Sendボタンを押してGPSモジュールに設定します。しきい値は1mにしてみました。

モードに変更した後、設定値を保存しておく必要があります。同じくu-centerでCFGの画面を開き、Save current configurationを選んで、Sendします。

設定変更後、後は同じように動作させます。測位の精度が十分に得られると、HDOPが999となり、固定位置モードに入ったことがわかります。この状態でOCXOのカウントをグラフにしてみました。600秒の移動平均を2重にかけています。

通常モード(位置測位も常時行う)の結果(下)と比較してみると、位置固定のモードの結果(上)はふらつきが激しくなっている感じがします。少なくとも改善した印象は受けません。

こちらももう少し回数を重ねて実験してみる必要がありそうですが、少なくとも期待できるほどの効果は無さそうな感じです。

今回はLEA-6Tというタイミング用途向けのGPSモジュールを使いましたが、しばらく試してみた感触では、GPSDOを作るという目的にはこれを使う意味は無いかもしれません。もっと安価なGPS(同社のNEOシリーズ等)がありますが、そちらで十分な気がしています。フットプリントも小さいですし、次回基板を作る時は、そちらを使ってみたいと考えています。

最後に、GPSのPPS信号をトリガにして、OCXOの正弦波をオシロで観察してみました。この状態では、50mHzほどの誤差があるのでおよそ20秒で一周期ずれていきます。周波数誤差による一定のずれに加えて、GPSモジュールのクロックに由来するPPS信号の周期の量子誤差により時折波形が20ns程度飛ぶのがわかります。

次回こそは周波数制御をしてみたいと思います。

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