キットとして頒布してきたHFコンバータですが、おかげさまで好評をいただいております。最近ではQEX Japan No11でも紹介していただきました。
ところが、頂いたレポートの中で、当初に比べて感度が低下して、故障させてしまったのではないかというケースを何件か頂いています。
実はHFコンバータは入力回路に弱点があります。これは入力のカップリングコンデンサを意図的に省いているためです。なぜそうしたかというと、JJYなど極低周波の信号まで受信してみたいと考えていたため、入力がDCまで動作可能なように構成したためです。Loとしてジッタの少ないクリスタルオシレータを使っており、これが実際なかなか信号純度が良く位相ノイズが少ないため、低い周波数まで実用的に使用できるようです。実際にJJY 40kHz(60kHz)を受信できたというレポートをいくつか頂戴することができました。つまり、40kHz(60kHz)を+100MHzして、100.040MHz(100.060MHz)にアップコンバージョンして受信できているわけです。(実はまだ自分ではJJYを受信する環境を整えられていないのですが。。)
ところがこの代償として、アンテナ端子に本当にDCを掛けてしまった場合には、間に入っているLPFはDCを阻止しないので、DBMのミキサーに電流が流れてしまうという構成になっています。そんなことをしてしまえば繊細なミキサーダイオードは、あっさりと破壊されてしまいます。これを少しでも食い止めようと、ESD保護部品キットのLとRでDCをバイパスするようにしているのですが、後述するように電源を接続してしまえばひとたまりもありません。
アンテナ直下にアンプを配置するようなアクティブアンテナを使う場合、同軸に電源を重畳して使う場合があり、このような同軸をもしHFコンバータの入力端子に直結してしまった場合、即座にDBMが破壊されてしまうことになります。症状としては殆ど受信できない、または感度が著しく低下してしまいます。DBMに内蔵されているリングダイオードのうち、電流が流れた経路だけが破壊され、他の一部のダイオードは生き残った状態となる場合があるので、まったく受信不可となるわけではなく、強力なAM放送や短波放送なら受信できることもありますが、感度は著しく低下となります。
ちょっとこだわってこのような入力回路にしていたのですが、不注意等であっさり壊してしまう結果になるのはいかがなものかと考え直すようになりました。少なくともDCを掛けたくらいでは壊れないようにしようと、次回以後の頒布版ではカップリングコンデンサを追加するようにしたいと思っています。
これまでのキットの場合は、下の写真にあるように、SJ2のジャンパを切って、そこに10nFから100nF程度のコンデンサを追加することを推薦したいと思います。写真の向きに取り付ける場合はジャンパーを切るのを忘れないでください。もしリレーを実装していない場合は縦に取り付けるようにされると良いと思います。コンデンサはチップでなくても、何でもかまいません。もしよければ試した結果を教えてくださると有り難いです。
JJYなどを受信されようとする場合は、カップリングコンデンサの追加で感度が低下することが考えられますので、このような場合はショートするようにしていただければと思います。
もしこれまでキットを製作された方で、当初に比べて感度が著しく低下している場合、DBMを交換して修理して使い続けたいということであれば、若干数ですが在庫がありますので、ご連絡いただければ部品をお分けしたいと思います。(送料込650円。壊れたので交換したいという場合に限ります。念のため申し添えます。予備として買っておきたいというのはご遠慮ください。)
今後のキットの予定ですが、入力回路と保護部分の改訂を検討しています。ESD保護はオプションを止めて内容を変えて基本構成に入れてしまうことになると思います。円安(84円→102円)や消費税(5%→8%)などのインパクトにも負けず仕入れの工夫等で基本2000円を維持していましたが、DBMやクリスタル等の大物がそれなりに価格が上がってきています。前記の構成変更と合わせて若干価格を改訂させていただくことになると思います。
[補足]
途中バランやアイソレータトランスが挿入されている場合には、DC的にはショートなので、あまり気にする必要は無いと思います。また、カップリングを入れたとしても、経路が切れているわけではないので、故障に対して万全の対策になるわけではありませんのでご留意ください。壊れるときは壊れます。
[追記]
ゆうパパさんやPUPさんが早速実験してくれました。Cを入れても問題なくJJYの受信できているようです。安心してCを入れることにしたいと思います。
[追記2]
TOSHIさんも詳細なレポートを公開してくださっています。カップリングコンデンサの容量の違いやフィルタの特性をシミュレーションと実測でレポートしてくださいました。100nFでJJY40kHzは損失無しということがよくわかります。いつも的を得たご指摘大変ありがとうございます。
- ゆうパパさんのレポート https://blog.livedoor.jp/bh5ea20tb/archives/4787226.html
- PUPさんのレポート https://pup.doorblog.jp/archives/38284606.html
- Cの有無でのJJY(40k/60kHz)受信の変化の動画 https://www.youtube.com/watch?v=kAH0UlLZ_4Q
- TOSHIさんのレポート https://ggtoshi.at.webry.info/201406/article_5.html