先日ダイレクトサンプリングのスプリアスを見てみましたが、これに使うフィルタをシミュレータで検討、チップ部品で試作し、その通過特性(S21)を自作のVNAで見てみました。
RTL2832Uドングルのダイレクトサンプリング用として、サンプリング周波数28.8Mの半分14.4Mで上下に分け、HF帯をおおむねカバーするようなフィルタにするのが良いだろうと思います。強力なMF放送波が邪魔ですのでこれを除外するようにしたいと考えます。なるべくシンプルにしたいので、帯域が3〜15MHz, 15〜28MHzのフィルタ二つでカバーすることを考えます。
Ansoft Designer SVでシミュレーションした結果です。チップ部品として入手しやすく、部品の種類を増やさないようなるべく同一の定数になるよう検討してみました。
まずは3-15MHzのBPFです。阻止域は甘いのですがシンプルにしたいので3次のチェビシェフで、それぞれ三つの1.5uHと270pFの2種類の部品だけで構成しています。MF放送の1.5MHzは-40dB程度になっており、IMは十分低減できると思われます。
次は上側15-28MHzのBPFです。こちらも同様に3次チェビシェフです。上のBPFと同じ定数を使って、部品の種類が減るようにしています。ちょっとリプルが多いです。上の特性図と横軸が異なっていますのでご留意ください。
さて、これら実際に試作するにあたり、こんな治具を作って自作VNAにいろいろな部品を接続できるようにしてみました。
フィルタはこんな感じで試作しています。秋月の4x4の16穴のユニバーサル基板にIN/OUT/GNDのピンを立て、6つのチップ部品を並べて配線しているだけです。目的の周波数は低いのでラフな作りです。
さて、これを実際にVNAで通過特性を取ってみました。まずは下側3-15MHzのBPFです。通過域やリプルの様子など、かなりシミュレーションと近い結果が得られました。ちなみにVNAのキャリブレーションは簡便にレスポンス校正のみでやっています。
つづいて、15-28MHzのBPFです。上のグラフと横軸が違うのでご注意ください。こちらはちょっと残念な感じです。通過域がフラットにならず、両肩がだれており、帯域内でも-5dBほど損失があるようです。シミュレーションと一致しない理由は、定数の誤差(インダクタは誤差10%)、Qの低さ、自己共振の影響などが考えられます。原因は引き続き検討したいと思います。
ついでにもう一つフィルタです。ダイレクトサンプリングに限らず、コンバータを使った場合でも、MF放送がIMの主な要因ですので、これだけを除去するBEF(Band Elimination Filter)を作ってみました。これもシンプルに3次のチェビシェフです。赤線が通過特性ですのでご注意ください。阻止域の谷が狭く、あまり幅が得られていませんがまずはシンプル第一でやってみます。手持ちの部品を活用できるよう(新たに買う部品が減るよう)定数を選んでいます。現在住んでいる場所は、NHK第2の500kW局747kHzが12km先にあり非常に強力です。これが谷の中心になるようにしてみました。
これも実際に作ってみました。
試作したフィルタをVNAで特性を見てみました。残念ながらシミュレーションと違って阻止域がゆがみ、中心周波数がずれています。インダクタに47uHと少し大きめの値を使っていますのでこれの影響か、もしかすると入出力の信号飛び込みの影響かもしれません。校正がレスポンス校正のみで、漏洩信号の影響を取り除けていないことが原因かもしれません。シミュレーションとは一致しませんでしたが、一応フィルタらしくはなっていますので、今度実際に挿入して試してみたいと思います。
さて、フィルタをいくつか作ってみましたが、うまくいく場合、いかない場合があるようです。3-15MHzのフィルタは想像以上に一致していました。一方15-28MHzは残念な形でした。さすがに3次では全般に特性が甘い気もします。これらが実際の受信に際してどの程度効果があるのか別途試してみたいと思います。
自作したVNAですが、それなりに低い周波数では使えています。GUIを作って使っていますが、かなりやっつけで作っており、いろいろ不満が募ります。複数のトレースを表示したり、マーカなど欲しい機能がいろいろあります。全面的に再構成したいと考えているのですが、いつになることでしょうか。それから、半年前に注文していたbladeRFが明日ようやく到着する予定です。これもVNAにできるのではないかと考えていますので、試してみたいと考えています。