Computer & RF Technology

HFアップコンバータ第2弾の製作

HFアップコンバータ(HFCONV)のキット第2弾の準備を進めていたのですが、先週ようやく資材が整い、希望されていた方にアナウンスしたところすぐに配布完了してしまいました(ご希望に添えなかった方申し訳ありません)。

今回の設計では、前回の製作時に気がついた点をいくつかフィードバックして改善したつもりです。

  • 保護用素子(ESD DiまたはL+R)を入れられるようにした
  • DBMをIF/RFを入れ換えて(正規の使い方で)実験できるようにする
  • ローノイズ版のレギュレータを使えるようにする
  • USB以外の電源を供給できるように端子を設ける
  • リレーを独立して制御できるよう端子を設ける
  • リレーコイル用Diのパターンを追加
  • バッファ用ICのパターンを削除
  • シルクがランドに重なっていた箇所を修正(特に裏面)
  • USBコネクタ固定穴を追加

一方部品の方は、数がまとまったことによりDBMを代理店(ミニサーキット横浜さま)から購入することができました。非常に素早く、またこちらの立場をふまえたご提案も頂けるなど良い対応をしていただきました。DBMは、0.5MHzからがカバー範囲になっているADE-1+を選択しました。これならIF/RFを入れ換えなくても低域の特性が出せるかもしれません。

(上記回路は下で述べる対策が青字で入っています)

基板は前回と同じようにFusionPCBです。ちょうど中国の旧正月にあたる時期で、予定よりも発注が遅くなってしまいました。2月初めだと勘違いしていたのですが、年によって日にちが違うようで、今年は2/7-2/15と遅めだったようです。正月が明けて、製造と発送が順調に済んで安心していたのですが、こんどは配送にこれまでになく時間がかかり、結局さらに遅くなってしまいました。前回はシンガポールからでしたが、今回は香港からの配送でした。工場が違うのかもしれません。

  • 2/15発注
  • 2/23発送
  • 3/7到着

別な基板も同時にオーダーしました。2種類30枚です。

できあがった基板を見ると、若干レジストの色が薄めで、シルクが細く不鮮明ですが、きちんと製造されているようです。これまでのオーダーでは一枚くらい多めに入っていることがあったのですが、今回は注文した数ぴったりでした。

若干部品とパターンが変更になっていますので、配布にあたって改めて試作が必要です。というわけでさっそく作ってみました。これまでに何度も作りましたので、ささっと1時間くらいで組み上がります。

さっそく受信してみたのですが、思わぬことに調子が良くありません。感度が悪いのです。中波の放送が普通に聞こえるのですが、弱々しい感じなのです。

前回配布のコンバータだとこうです。

上記スクリーンショットでは目盛りが15dBという変則なので読みにくいですが、10dB以上差があります。

こんな状態ではキットを配布するわけにもいかず、20セットもの部品を抱えて正直青くなりましたが、なんとかしようと解決策を検討しました。

原因は、DBMの品種を変更のようです。データシート上では前回の品種よりアイソレーションも良く、コンバージョンロスも少ないはずでした。ところがこれはきちんとLoを駆動した場合の話であって、この設計のようにクリスタルモジュールで直接ドライブする場合には、DBMにより相性があり、かならずしも十分なレベルで駆動できるわけではないようです。オシロで見る限りでは十分な電圧振幅があるにも関わらずです。3dBのパッドを入れていたとしても、駆動インピーダンスが十分に下がっていないようです。SGでLoを駆動した場合にはロスは改善しました。

DBMのデータシートを見るとLoの駆動レベルで大幅にLoのVSWRが変化しています。DBMのLoがどのような挙動をしているのか興味があるところです。信号レベルでスイープ可能なネットワークアナライザで測定してみたいところです。Webで測定例を探したのですが見つけることができませんでした。

Lo駆動周りが原因ということが判ったので、なんとかならないか実験と検討で探ることにしました。前回はバッファのパターンを設けていたので、回避策もいくつか可能性を試せたのですが、今回は削除してしまいましたので、今あるパターンと手持ちの部品で対策する必要があります。

いろいろ実験してみた結果、バイパスコンデンサC10と、3dBパッドの入力側の抵抗R3をそれぞれ小容量のコンデンサに変更しマッチング回路とすることで、ロスが改善できることがわかりました。調整の結果、前回のコンバータよりもコンバージョンロスが改善できたようです。

この方針で回路と配布部品を変更することにしました。手元に用意できる部品の関係でコンデンサを並列に取り付けるという少々みっともない組立になりますが、性能が出ないよりマシです。小容量によるマッチングなのでDBMの個体差からくる再現性に若干懸念がありますが、何度かやってみた結果、大丈夫だろうと判断しました。

下の写真が対策後のものです。R3の箇所にコンデンサ18pFが2個並列になっています。C10も1nFから10pFにしています。

この方針でマニュアル等の説明を改訂して、配布の準備を再開しました。ちまちまとした部品を台紙に張り付け、部品を袋詰め、オプションの希望を受けてから発送作業をしました。

ようやく配布も済んで一段落です。

キットを受け取った方は、上記のような現象と対策があったことを了解頂き、万が一性能が思わしくない場合は、このあたりを疑ってみていただきたいと思います。

おまけですが、基板左側にあるパターンが、外部電源とリレー用で、ピンヘッダまたは端子(2.54 or 5.08mm)を取り付けることができるようにしています。こんな感じで端子を取り付けて、電源に電池をつかうことも可能です。

次回についてはちょっと悩んでます。DBMは入手性の点から今回と同じものを使いたいのですが、今回対策した回路を次回も継続採用とはしたくないのです。今回希望者すべてに対応することができませんでしたので、次回頒布も行いたいと思っているのですが、製作方針については今回のフィードバックを頂いてから考えたいと思います。ご希望、ご意見をお寄せ頂ければ幸いです。

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