最近作っているものをご紹介します。
まずはコンバータを統合したRTL-SDR受信機です。これまでHFCONVとしてドングルにアドオンする形でコンバータを提供していました。キットということもあり、サイズにはかなり余裕がありました。
ドングルそのものも小型ですので、コンバータと同じ一つの小さな基板にまとめてしまったら、超小型の名に恥じない受信機ができあがるはずです。
ドングルはその価格を考慮すれば十分すぎるほど実用になりますが、いくつか不満な点があります。
- 水晶の精度と安定性が劣る
- ダイレクトサンプリングの信号が引き出しにくい
- チップ内の1.2V生成用のスイッチングレギュレータからMF/HF帯にノイズが入る
これらの点を改善できないかとも考えていました。
- TCXOを搭載可能とする。クロック外部供給を考慮する
- 実験用にいくつかの端子を引き出しておく
- リニアレギュレータを使用する(ただし発熱は倍増するはず)
というわけでレイアウトしてみたところ、無事HFCONVと同じサイズの基板にレイアウトすることができました。ケースはタカチのMX2-6-5に入れることができます。
今回、コンバータ部分の切り替えはリレーではなくGaAs RF Switchを使ってみました。また、コンバータの切り替えはRTL2832Uに搭載されているGPIOポートで行うようにしました。そうすることですべてをUSBから制御することができ、大変スマートにできます。
RTL2832UのチップはVQFNという0.4mmピッチのパッケージです。これまで0.5mmまではやっていましたが、0.4mmは初めてです。基板がうまく製造できるか、またハンダ付けも懸念でしたが、無事成功しました。QFPよりQFN(MLP)のほうがハンダ付けが容易というのは本当でした。
最近顕微鏡を導入したのですが、ハンダ付けのチェックが格段に容易になりました。もう顕微鏡は手放せません。
というわけで出来上がった基板です。
この最初の試作では部品はドングルを分解してその部品をそのまま流用して作成しました。ドングルからSMD部品を取り外すにはホットエアソルダーを使っています。
下のエッジにある左のLEDは電源、右のLEDはコンバータの状態を示しています。コネクタはUSB Aではなく、USB mini-Bにしています。
軽く動作試験をしたところ受信機としては無事に動作しました。また、コンバータの切り替え制御をUSBからソフトウェアで行う実験はうまくいっています。ただ、切り替えを行うためには、librtlsdrというライブラリを改造する必要があります。実際に供用するためには、各種SDRソフトウェアに組み込む必要がありますが、このあたりをどうするか悩ましいところです。
懸念の発熱ですが、それなりに発生します。アルミケースに収納することで、基板のエッジからケースに放熱されるよう一応配慮しましたので許容範囲かなと思います。先日初めて(!!)ケースを買ってきたので、仮に入れてみました。
以上、一応動くところまで確認して、ちょっと作業が止まっています。
最初の試作ですので案の定いくつかミスがありました。RF Switch廻りはバイアスについて配慮を失念していたので、DCカットのコンデンサを追加で挿入したため、ちょっとみっともないことになっています。いくつもコンデンサが必要なのは、上のほうのUHFのバンドに悪影響がありそうで、このあたりはちょっと考え直したいところです。マイナスバイアスのRF Switchを使うとコンデンサ無しで直結可能なのですが手頃な品種が見当たらず、、、リレーに戻すことも考えています。
時間ができたら作業再開したいと思います。
ちなみに来週末11/23-24は東京ビッグサイトで開催されるMaker Faire Tokyo 2014に出展します。去年と同様で、SDRやRFがメインの出展内容ではないのですが、ブースの隅には最近作っているものも置いておきますので、もし機会があればご覧ください。場所は26-03です。隣には札幌SDR研究会も出展しています。
- librtlsdr。RTLドングルを利用可能なSDRソフトウェアの多くはこのライブラリを使用しています。 https://sdr.osmocom.org/trac/wiki/rtl-sdr
- MFT2014 https://makezine.jp/event/mft2014/