RTL2832Uドングルは受信機としてどの程度の感度なのか気になっていました。ドングルにはいくつか種類がありますが、チューナチップの種類や個体によっても差があるようです。今回HF用アップコンバータを作ってみたのを機に、計測をしてみることにしました。
本来ですと受信機の感度は、きちんと定義された方法があるのですが、手元にある機器でざっくりと測れる簡易的な方法としました。
信号源としてジャン測を使用しました。ちょっと動作が怪しいのですが、出力のレベルは信用できるものとして、信号源からのキャリアの出力レベルを10dBステップで変化させて、RTL2832Uドングルでどの程度の強度で受信できるのかを計測しました。ソフトウェアはgqrxを使い、AGCはオフにしての計測です。
まず、R820Tに信号源からの120MHzの信号を直接入力した場合です。ノイズフロアはgqrxのメモリで-90付近です。-100dBmくらいから信号が見え始め、以後-30dBmくらいまでは入力にほぼ比例した強度で受信できます。-30dBmより強いとAGCが利いてほぼ一定の強度となります。AGCの利き始めにちょっと歪んでスペクトルが広がりますが、利くと歪みが消えます。0dBmの入力でもちゃんとAGCが利いて歪みは見当たりません。この点なかなか優秀だと思います。
以下の動画は入力を10dBずつ増加した様子のスクリーンキャプチャです。入力信号強度をアノテーションとして入れています。
続いて、アップコンバータを通した場合です。今度は信号源から20MHz付近の信号を入れて、120MHzで受信します。-100dBmでうっすら見え始め、-30dBmからはAGCが利いて一定になります。ノイズフロアは-90dBmで上と同様です。ノイズに関してアップコンバータの影響は無さそうです。
以下の動画は、上と同様に入力を10dBずつ増加した様子のスクリーンキャプチャです。周波数表示はコンバータのLo分オフセットしていますので、入力信号の周波数となっています。
SGとコンバータとドングルの接続です。ケーブルタイプのHUBを使ってドングルを接続し、コンバータに電源を供給しています。
目ノコで数値を読み取った結果をgnuplotでグラフにしてみました。-70dBm付近に若干の非直線がありますが、AGCが利くまではほぼ比例。AGCが利いたら一定になっています。
アップコンバータを通した場合の差は5dB程度でした。DBMの変換ロスはもうちょっとあるはずなので、このあたりは入力する周波数の違いやSGのレベルの偏差等が影響していそうです。
感度の測定というものの実際はSGのキャリアをgqrxのFFTで見ただけです。-100dBmの入力で10dB程度のS/Nが取れているようです。体感的には標準的な受信機程度の感度を持っているといえそうです。
メモ
- 本来ですと変調信号を入れた上での、復調感度を計測したいところですが、機材の都合上かないませんので上記のような計測としています。
- ジャン測のSG(MG3660A)はPLLがロックせず、VCOのフリーラン状態なのでスペクトルがピンと立たずに大きく広がっています。というわけで周波数については信用できませんが、信号レベルは信用できるとの仮定で計測しました。あくまでジャン測での結果ですので、その点参考程度に結果をご覧ください。
- RTL2832Uドングルの感度に興味があったので、どなたか結果を公開してくれないか期待していましたが、結局待ちきれず自分で測るつもりでジャン測入手してしまいました。ところが上記に書いたような不具合があり、ちょっと残念なことになっています。せっかくなので修理したいところですが、余計な仕事を増やすことになってしまいました。
- ドングルによって感度に違いがあるようですので、こちらも比較してみたいと考えています。E4000はR820Tより若干感度良く受信できるようですが、歪みやすいようです。また別途結果をまとめたいと考えています。
- 受信周波数による差にも興味があるところです。1G付近では数dB程度の差で受信できています。こちらも別途結果をまとめたいです。