Computer & RF Technology

GPSDOその後

実験中のGPSDOですが、あの後しばらく稼働させたまま長期放置して様子を観察していました。やはり大きいDOCXOのほうが、長い期間だと安定なようです。簡単に状況をメモしておきます。

前回の報告の後、Raspberry PiをホストにUSB接続してデータをロギングしならがら、10/15から2週間ちょっと放置しておきました。

グラフにしたとき、あまり長期だとくちゃっとして判りにくいので、まずはDOCXOについて動作開始後一日分を示します。観測周期のグラフです。

上限の4096秒間隔での動作に安定しています。

次は、同区間のDAC設定値の変化です。

1時間くらいで安定した後、下降トレンドに時折プラマイ1の修正があるくらいで、これも安定しています。

続いて同区間の周波数偏差です。今回は相対値を計算しました。

0.1ppbの範囲に収まっています。はやりDAC設定値の変化で、ステップ状の変化が見えます。桁を小さくしてけば、どうしても見えてしまいます。

振動に見えている成分が気になりますが、600sでの移動平均を取っているので、その周期が見えるせいです。もちろん、移動平均の区間を延ばせば見え方は変わります。例えば、3600秒にするとこんな感じになります。

変動幅はプラマイ0.05ppb程度となり、細かいノイズは減りました。先ほどグラフにあったノイズは、600s以内に1カウントが出たり入ったりしているのが見えていたわけです。が、3600秒程度のうねりは残るのがわかります。いたちごっこですが、元データがカウント値ですから致し方ありません。

次はカウント誤差を積算した値、すなわち位相誤差です。

4096秒の各区間で、プラマイ3の範囲で動いているのがわかります。これを常にゼロに近づけたいのが目標なわけですが、できるだけDAC更新周期を延ばしたいのもあり、この範囲の変化を許容するような実装にしています。

長期データを見てみます。まずはDAC設定値です。

横軸の単位は、同じく秒で、140万秒程度の結果です。単調に下降トレンドでしたが、すこしづつ落ち着いてきている感じもします。エージングによりさらに安定することが期待できます。

途中原因は不明ですが一時的な変動があったようですが直に戻っています。受信か電源等に何かイベントがあったのかもしれません。

続いて周波数偏差です。

これも途中大きく動いたのが見えます。あとは概ね0.1ppb程度に収まっているのがわかります。

以上、DOCXOの結果の一部を紹介しましたが、十分安定なことがわかりました。

一方、小さいOCXOの方です。当初は小さいOCXOの方が安定していたように見えたのですが、同時にデータを取っていました。まず、DAC設定値のグラフを示します。

なんと、途中小ジャンプが2回、大ジャンプが1回発生していたようです。先ほどのDOCXOに比べるとうねりも見られます。やはり大きいDOCXOの方が、安定性は格上のようです。

つづいて周波数の相対誤差です。

何度か大きく(とはいってもppbオーダーですが)外れた様子がわかります。他は概ねプラマイ0.3ppb程度の範囲ですが、DOCXOよりも振れ幅が大きいのは、制御電圧の感度の違いが効いていると考えられます。もう少し感度を下げると良い結果になるかもしれません。

以上GPSDO実験の結果の一部をご紹介しました。やはり、大きいDOCXOは安定して動作するようです。Time-nutsな方々のWebページでも、Morion MV89aは、なかなか好評価でした。

信号源としては、既にどちらのOCXOのGPSDOも十分と考えていますが、一度はちゃんとした基準源と比較してみたいところです。

やっていて思うのは、カウント値による安定性観測の限界です。長期の平均を取れば桁数は上げられますが、時間変化が見えなくなってしまいます。できれば、秒付近での位相変化を観察してみたいものです。

Time-nuts関連の資料を漁ると、興味深いことを知りました。Time-nutsの一人、John Milesさんが開発したTimePod 5330Aという測定器(クロススペクトラムアナライザ)が、アラン分散や位相ノイズの測定器として過去に$5000程度で頒布されていたのだそうです。それがそのままSymmetricom(現Microsemi)に買収されて、現在は3120Aとして販売されています。制御用のTimeLabというソフトウェアも提供されており、もちろんアラン分散の解析も可能です。そしてなんと驚いたことに、TimePodのマニュアルには回路図など必要な情報がほぼ全て記載されており、TimeLabはフリーでダウンロード可能で、なんとソースコードも含まれているのです。アマチュアスピリットここに極まれり。素晴らしい。TimeLabはTimePodだけではなく、TICなどいろいろな測定器を使うこともでき、データを他からインポートしての解析も可能なようです。少し眺めてみましたが、とても興味深いです。このあたりで何かできないか、ちょっと考えているところです。

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