Computer & RF Technology

RTL2832Uドングルの水晶をTCXOに交換してみる

RTL2832Uドングルの欠点として、水晶発振子の安定度が良くないことが指摘されています。実際に手元にあるR820Tを使ったドングル2つは、それぞれ90ppm、45ppmのずれがありました。さらにドングルはかなり発熱するので、それの影響で10ppm程度動いてしまいます。温度が高いので息を吹きかけると周波数が動くのがわかるほどです。

これを改善すべく水晶を交換する試みがネットにもいくつか公開されています。ところがこの28.8MHzの水晶やモジュールはなんとも入手しにくく、カスタムオーダーして入手する必要があるようです。

他の周波数から28.8MHzを得ることも考えてみました。例えば14.4MHzのTCXOを2逓倍する方法は既に試みられています。他に、19.2MHzのTCXOは入手し易い(ジャンクの古いPHSや携帯電話から取れる)ので、これを3/2倍できれば良いのですが、簡単にできる妙案がありませんでした。(やろうと思えばFF一段と3逓倍で実装できるのですが何とも面倒です)

そんなところに今回osqzssさんがカスタムオーダーした28.8MHzのTCXOの頒布案内してくださったので、さっそくお願いして分けていただきました。TCXOとコンデンサ等周辺部品のセットです。

水晶が2520サイズで小さめです。チップ部品も1005(0402)サイズです。飛ばして紛失する分を配慮して余分に入れてくださっています。

さっそく改造してみました。Webに掲載されている手順に従って作業します。ドングルは以前ダイレクトサンプリング改造していたものを使いました。

電源はジャンパで配線する必要がありますが、いつものようにウレタン線を使いました。

さっそく受信テストしてみます。北海道では123.775MHzは受からないので、代わりに120.100MHzで試してみます。

ちゃんと合っています。誤差は概ね1ppm以下のようです。素晴らしい。

これで周波数安定度について、一つ懸念が解消できました。頒布の労を取ってくださったosqzssさん、ありがとうございました。

実際作業してみての感想ですが、正直なところ難易度は高めです。パターンカットやレジスト剥がしなど、いわゆるリワーク作業が必要です。また、SMD部品にはそれなりに慣れているつもりでしたが、1005サイズはレベルが違います。ハンダの表面張力で容易に引っ張られて、ずれたり立ちあがったり(いわゆるマンハッタン現象)してしまいます。部品の小ささよりも、その軽さが難易度を高くしている感じです。経験としてチャレンジし甲斐はあると思います。

もし作業に自信が無い場合は、ゆうパパさんによる水晶交換が良いかもしれません。水晶交換済みのドングルも用意されています。

リファレンス

おまけ

最後に追加で。以前自分が試みて失敗した改造例です。26MHzのTCXOをDead Bug方式で実装してみました。librtlsdrには、RTL2832Uのクロックとチューナチップのクロックをそれぞれ設定できるAPIがあり、調べて見るとgqrxやgnuradioのパラメータでも設定できるようです。これはイケルかもと思って試してみたのですが、当たり前ですがRTL2832Uの周波数を変えてしまうとUSBを認識することができずにアウトでした。

別案として、R820TとRTL2832Uのクロックを分離し、RTL2832Uには28.8MHzを供給したまま、R820Tには別な周波数という改造は可能かもしれません。The End Of Civilizationさんの改造がそれにあたりますが、このR820Tドングルでは改造しにくいので、結局やりませんでした。

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